ファイナルファンタジー3の思い出
誰かがYouTubeにアップロードしたファイナルファンタジー3(FC版)の音楽を聴いてみた。あまりの懐かしさに涙が出るかとすら思ったけど、そうでもなく、全然聞き覚えのない曲も多い(笑)。意外と忘れてるもんですねー。
もっとも、やはり記憶を喚起させる曲というのはあるもので、僕の場合は水の世界のテーマだった。
ファミコン音楽というとピコピコしているイメージがあるけど、この曲はどっちかというと地味で、なんとなくうら寂しい。それもそのはずで、この曲の流れるシーンは世界の茫漠とした広さと孤独感がポイントだからだ。
ファイナルファンタジー3では、4人の主人公が冒険をするわけだけど、ある段階で自分たちが活動してきた世界の「外」があることを知る。この世界は実は浮遊大陸で、外には遥かにもっと広い世界が広がっている。閉じ込められた箱庭の世界だったのだ。主人公たちは飛空船を手に入れ、ついに外の世界に繰り出す。新しい冒険を求めて。
そこで出会うのが一面の海だ。
あたり一面見渡す限りの海には何もない。土地もなく、街もなく、人もおらず、敵もない。なーんにもない中、飛空船のプロペラのバタバタという効果音が虚しく響く。冒険しようにもなんにもない世界をうろつきまわって、世界がこうなってしまっている理由を探すことになる。まあ、実際には広ーい世界のどこかにイベント発生ポイントがあって、そいつを探せばいいだけなのだけど、実際正直この状況に直面したときには途方に暮れてしまった。モンスターすらいないという状況で、何をしたらいいんだかわからない、っていう漠然とした不安。そんなものがこの音楽には込められている。と、思う。
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すこし思うことがある。
たぶんこの音楽はストリングスを使うことが意図されているんだけど、実際にファミコンでそんな流麗な音が出せるわけはなく、チープな音が組み合わさったようななんだか不思議な音色だ。でもたぶん、このサウンドはこれがいい味になっている。この曲をストリングスを使って演奏したら、音楽としては流麗だけど、ごく普通の記憶に残らない音楽になったのかも、とすら思う。
ファミコンのころにゲーム音楽がどういうふうに作られていたのかは知らない。作曲家がごくふつうに作った音楽をプログラマが可能な限りファミコンの音に移し変えていくのかもしれないし、作曲家がファミコン音楽の特性を考えてプログラムしていくのかもしれない。たぶん現実はその中間で、プログラマと作曲家がやりとりをしながら仕上げていくのだろう。
で、たぶん、そういうやりとりの中で、たまたま何かが噛みあってこういう音楽が生まれることがある。そういう「名曲」はいくつかあって、この曲もそのひとつだろうと思う。