S-Fマガジン2010年3月号
英米SF賞の受賞作特集。
ナンシー・クレス「アードマン連結体」
年はとっているがまだまだ元気な物理学者のヘンリー・アードマンは、最近奇妙な現象に見舞われていた。気を失ったり、不思議な幻覚に見舞われる。元気なつもりだったのだがもう年なのだろうか。いや、何かがおかしい、それにどうもほかの老人たちにも異変が起きているようだ……という導入から始まるストーリー。齢80歳を越えると人は新しいステージに進化する、というのはちょっと珍しく、なかなか面白い。ところで科学的に微妙な訳が見られるのが気になった。宇宙時間とかさあ。
ジェフリー・A・ランディス「マン・イン・ザ・ミラー」
いやぁ、ラリー・ニーヴンが書いてないのが不思議な物理SFですね。お話の筋は無きに等しく、放物面に落っこちた主人公がどうやって脱出するかというシンプルな話。シンプルというよりもプリミティブというか、むしろたんに物理パズルというべきかもと思いますが、まあ、こういう話は俺、嫌いになれないんですよね。
キジ・ジョンスン「26モンキーズ、そして時の裂け目」
エイミーは26匹の猿をつれてショウをやる。ショウのお題目は、26匹の猿が脱出不能なバスタブから一瞬にして消え去ること。でもエイミー自身もどうしてそれができるのかはわからない。猿たちは勝手に消滅し、しばらくすると戻ってくる……。ラストシーンがちょっとよかった。
ジェイムズ・アラン・ガードナー「光線銃―ある愛の物語」
いやーこれはいいね。グッとくる。森で光線銃を拾ったジャックは、ヒーローになるため森で独りで体を鍛えたり、光線銃を解明するために勉強したりする(笑)。でも成長すれば女の子と仲良くなる機会もあったりして、じゃあ光線銃はどうするんだ、鍛錬はどうなった、みたいなことになったりならなかったり。心の奥に中二病を隠し持っているSFファンみたいな人種にはこういうのは大変ウケると思いました。
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今月号はこの四編ですが、ノヴェラ2本、ノヴェレット2本というセレクトなためそれなりに読み応えがあります。ほか、先日来日したテッド・チャンのインタビューもあり。