コリン・タッジ『ザ・リンク ヒトとサルをつなぐ最古の生物の発見』

This entry was posted by on Tuesday, 10 November, 2009


2007年に驚くべき発見があった。ドイツで1980年代に発見され、そのまま個人収集家のもとで眠っていた化石が世に出たのだったが、これが過去に例がない、ほぼ完全に近い4700万年前の霊長類の化石「イーダ」だった……。

この出だしにぐっとくる。4700万年前のほぼ完全な化石。新種の発見。個人収集家から放出されたというミステリアスな出自。それだけではなく、これが人類につらなる霊長類進化を埋めるミッシング・リンクのひとつであるという。このあたりで読者の熱気は最高潮に達する。

のだが……。

本書は全部で9章に分かれる。1章と2章でだいたい上に書かれている話が説明される。ところが3章から7章のすべてと8章の一部、分量にしておおよそこの本の7割ぐらいの内容はイーダとはまったく何の関係もない。4700万年前というのはどういう時期だったのか。気候は、生態は、植生は。発見されたメッセル・ピットとはどんな土地で、なぜこんなに完全な化石が発見されるのか。霊長類とは何で、どんな分類があり、どんなふうに進化してきたと考えられてきたか……。このあたりの説明も決して悪いとは思わない。読むと面白いし、なるほどなあとも思った。しかしね、いかんせん長すぎるのではないかい。

確かに、霊長類の進化に関する学説が説明されないと8章の説明などわからないところが多くなりすぎてしまうだろう。そういうわけで、この本の説明量は必然だった、という見方もできる。でもオレは違うと思うなあ。2007年に見いだされたばかりで、本の結末によると2009年の2月に「お披露目」をしたばかりの資料である。研究なんてまだまだこれから、わからないことばかりで、この化石から何かを断言するのはまだ早いという時期なのだろう。化石について書けることがあまりないから周辺情報で埋めた本、というのが個人的な印象ですね。

強くはお薦めしないが、肝心の化石の話だと思って読みさえしなければ良い本であるかもしれない。

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