ビール旅行 / ベルギー編

This entry was posted by on Wednesday, 5 October, 2011

ドイツ編の続き。

ベルギーではブリュッセル、アントワープ、リエージュの3都市に行った。

ビール

昨日もちょっと書いたけど、本場のベルギービールについては事前の期待と裏腹にものすごい感動はそんなにはなかった。日本でもベルギービールはそれなりに認知度があるし、私もベルギービールのお店は何軒か知ってて飲んでる。ボトルで輸入されている以上、日本で飲むのとベルギーで飲むのに大きな差はないと思う。

とはいえ、それでも面白い発見はちゃんとあった。

ブリュッセルではランビックの醸造所を見学した。ランビックというのは自然酵母を使った発酵……ようは、屋根裏に麦汁を放置しておくと大気中の菌に醸されていつの間にか発酵してお酒になってましたー、という製法のビールだ。そのまさに発酵する屋根裏も見られる。それも見学用のセットなどではなく、季節になれば本当に醸造しているような、本当の本物だ。なるべく環境を維持するため、設備に手を触れてはいけない。生態系のバランスを崩さないために屋根裏の蜘蛛の巣も払ってはいけないという(実際、蜘蛛の巣だらけだった)。しかしそんなこと言っても見学者がたまたま風邪ひいてたり、朝に納豆を食ってきたやつとかがいたらどうなるのだろう、などの疑問は尽きないわけだが……まあ、それはさておき見学はとても面白かった。自然酵母というといかにもその辺で放置している適当な製法みたいだが(上ではわざとそんなように書いたが)、実際には発酵以外にも麦芽を粉砕したり麦汁を煮詰めたり、樽に詰めて発酵を進行させたり、かなりの工程を経た伝統の製法である。また、一家で造る伝統的なビールの醸造所というのは、工場と違って設備がわりと人間に想像できるレベルの形状をしていて、と言うかなんだかスチームパンクみたいでかっこよかった。やたらに写真をとりすぎてしまった。

そのカンティヨン醸造所では見学の後に試飲もさせてくれる。このビールがまるでビールとは思えない味わいですごかった。何しろものすごく酸っぱい。色合いも薄く、後味に少し渋みがあり、泡もそんなに出ないため、なんだか白ワインみたいだ。できたランビックの1年もの、2年もの、3年ものをブレンドして瓶詰めする「グース」は瓶内発酵をするので泡があるが、単品のランビックは泡も全然でないため、知らずに飲んだら大抵の人は白ワインだと思うのではないだろうか。酸っぱい飲み物は得意ではないので絶賛ではないけれど、なんというか、これは本当にスペシャルな飲み物だと思った。写真はそのランビックと、ランビックに糖分を追加して飲みやすくした「ファロ」というお酒。ファロのほうが若干飲みやすいけど、どっちみち酸っぱいです。

ちなみにカンティヨンのビールは小西酒造が輸入を取り扱っているので、グースやクリークは日本でも買える(醸造所見学者に配られる紙があるけど、これも小西酒造が作っているみたい)。また飲んでみたいような、そうでもないような。

アントワープでは「クルミナトール」という名前のバーに行った。ここはベルギービールを何年も長期保存した「ビンテージ」ビールを飲ませてくれるという店。ものすごく分厚いメニュー本があり、シメイのブルーなど何十年と種類に分かれてリストがある。ここは当然、昔のビールと今のビールを飲み比べてみるべきでしょうということで、1985年のヒューガルデングランクリュと2011年のを飲み比べ。写真はそのときのもので、左の濃い色合いのビールが1985年のもの、右の普通の外見のが今年のヒューガルデングランクリュ。2011年のものもそりゃおいしいが、1985年のものは別格だった。注ぎに来たおばちゃんが「香りを嗅いでごらん」と薦めるのもわかるように、シードルにも似た不思議な芳香を発している。味もかなり丸くなっており、逆に言うとヒューガルデンらしい鮮烈な味は失われてしまうという言い方もできるかもしれない……。一度は行ってみるべき店だと思った。

リエージュではさほどビールを楽しむことはなかったが、「ペケ」(peket)という蒸留酒を試してみた。どうもいろいろ調べてみたところによるとジン(というかオランダ原産のジェネバー)と同じ物のようだが、ワロニア(リエージュを含むベルギー南部)ではそのように呼ばれるのだとか。フルーツジュースで割って飲む飲み方が一般的なようで、そうなってしまえば普通のカクテルみたいなものだが、その地の特別なお酒というのはそれだけでスペシャル感がありました。

食事

ベルギーの食事といえば、ムール貝のワイン蒸しとか、フリット(フレンチフライ)とか、そういうものとビールを飲むといった印象があったのだけど、実際にはベルギーでビールを飲むような場所はまるっきりビール専門のバーであり、サラミやチーズなんかはあってもムール貝などは置いていない。ムール貝を食べるにはレストランに行かないといけない。というわけで、そっち方面はあまり充実しなかったのが今回の旅行という感じ。レストランでベルギービールを飲んでもいいのだけど、それでは何のためにベルギーに行ったのかわからないし……。というわけで、豊富なベルギービールを飲みつつムール貝を味わうのは、むしろ日本(とか)に特有なのかもしれない。

いっぽうのフリットはベルギーではとてもメジャーな食べ物なようだ。そもそも英語ではフレンチフライというけど発祥はベルギーなのだそうで、街角にもトレイに山盛りにするようなフリットやさんがある一方で、ちゃんとしたレストランでも付け合せに出されるなど、かなりありとあらゆる所で供される(ビールバーを除く)。ドイツではどんな料理にも付け合せでジャガイモが出てきて、大体の場合はマッシュポテトだったが、ベルギーではマッシュする代わりにざく切りにして油で揚げるというわけだ。しかし、ようはフライドポテトなわけで、なんとなくジャンクフードのイメージがあり、ちゃんとしたレストランで出てくるのはなんだかちょっとおかしかった。

ワッフル

食事とデザートは別腹ってことで、ベルギーといえばチョコレート、それとワッフルだろう。

現地についてガイドブックを改めて開いてから知ったのだが、ベルギーには二種類のワッフルがある。一つはブリュッセルワッフル、もうひとつはリエージュワッフルというのだという。どちらもアメリカや日本で食べるワッフルとは少し違う。

ブリュッセルワッフルは、長方形の綺麗に整った形をしている。粘性の低い生地を流しこんで焼くのだが、敢えてワッフルメーカーから生地を溢れさせてこの綺麗な形を作るようだ。食感は軽く、サクっとしている。ホットケーキを作った時の、端っこの方のちょっと焦げてカリカリになってる部分の味に似ている。で、これに好きなトッピングを上に載せる(コレ重言?)のが基本みたい。写真は私がブリュッセルで食べた、生クリームとフルーツとチョコレート載せ。めちゃめちゃ甘くて正直やりすぎたと今は反省している……。上に何かを載せて食べるという食べ方からしても、あんまり街中のスタンドで買うような食べ物ではなく、イートインで食べるもののようだった。ガイドブックによれば家庭で作ったりもするというが、旅行者の身なのでそこの真偽は不明だ。

一方のリエージュワッフルは、概ね丸い不定形をしている。アメリカや日本でよく食べられる「ワッフル」のイメージに近いのはこちらだ。だけど、生地はもっと粘性が高く、ほとんど団子みたいに固形になっているものをワッフルメーカーで挟んで焼くようにしていた。生地には砂糖が入っているようで、焼きあがると表面が焦げてちょっとカリッとしているのがスペシャルなのかも? 中はふんわりとしている。名前は「リエージュワッフル」だが、別にベルギーのどこでも駅のスタンドとか自動販売機とかで売っているのはリエージュワッフルの方だ。だが、やっぱりそういうものよりは街中のスタンドで買うもののほうが焼きたてで美味しい。こちらもチョコレート入りを頼んでみたところ、焼きあがったワッフルに串を突き刺して穴を作り、そこにチョコバーを差し込むという乱暴なつくりだった。ところがワッフルの熱でチョコが溶けて近くの生地まで滲んでいくから、つくりは乱暴でもこれがメッポウうまかった。

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