山名沢湖『恋に鳴る』

This entry was posted by on Monday, 19 September, 2011

恋に鳴る 1 (まんがタイムコミックス)

3年ぶりらしい山名沢湖の単行本。

淡い恋愛モヨウと、効果音とかオノマトペをからめた短篇集。一話目「カサコソ」は初デートが微妙だったときに落ち葉を踏む音、三話目「コトコト」は気になる男と一緒にカレー当番した時の煮詰める音、といった具合。もっとも、オノマトペをサブタイトルにしてストーリーに絡めるという部分は作品コンセプトは残るけれど、ストーリーはすっかりいつもの山名沢湖となり、恋愛テーマの回も多いがそうでない回もそれなりにあったりして、そのへんはいつの間にか有名無実化している気もする。二話目からして、あらすじでまとめちゃえば「ミシンで服を縫う」というだけだからね……。しかし、まあ、それがいいのです。個人的に好きなのは、九話の「カタカタ」(FAXが受信して紙の出る音)と八話の「じーっ」(見つめる視線)かな。

気がついたら山名沢湖の単行本は全部持っていると思う。どこか空想的で、というか登場人物が延々と妄想を展開していくメルヘンな世界はふわふわしていて、そういう話は個人的には苦手だと思っていたが、この作者の漫画では自然に受け入れられる。妄想を妄想と割りきった上でその妄想に浸るような、セルフツッコミの視点を忘れないでいつつも妄想を楽しむようなところが良いのかなあ。「チリンチリンチリン風が吹く/意外と涼しい/やっぱり暑い」というふうに。オチがつく感じ。

ところで「1」と巻数表示があるのですが、これって続きでるのかなあ。このネタでもう1冊分も続けるのは相当大変な気もするけれど。のんびり待ちます。

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