フェリクス・J・パルマ『時の地図』
これはスゴい! スゴい、ヘン! 時間テーマのなかでも群を抜いてユニークで面白い作品のひとつだろう。
ときは19世紀末のロンドン。そのころのロンドンは「タイムマシン」を発表したばかりのH.G.ウェルズと、西暦2000年への旅行を企画するマリー時間旅行社を軸にしてみっつの物語が語られる。恋人を切り裂きジャックに殺された上流階級の青年、西暦2000年の未来人と恋に落ちた女性、あとH.G.ウェルズ。
しかし感想を書くのは難しいなあ。なんとも奇妙な読後感で、面白い仕掛けがあるのですが、ネタを割らずに楽しさを伝えるのが難しい。ぜひ、あんまり先入観を持たずに読んでほしい。なんだか大仰な語り口が序盤は少し退屈に感じるけれど、ウェルズの名前が出てきたぐらいから俄然面白くなってくる。
内容的には短編集(というか中編集?)といっていいぐらいの構成だけど、そうはいってもそれぞれの物語が少しずつ重なりあっているので、ちゃんと前から順番に読みましょう。語り手もはじめにそう言ってるしね。特に、第一部を読んでいたときに感じた違和感(というか間違い)がちゃんと第三部で拾われていたのには感心した。
よくできた娯楽小説です。おすすめ。