垂水雄二『厄介な翻訳語』

This entry was posted by on Tuesday, 5 October, 2010

厄介な翻訳語―科学用語の迷宮をさまよう

悩ましい翻訳語』の同著者による姉妹編というか続編エッセイ。例によってというかやはりというか、わりと普通の単語の誤訳や陥りやすい罠から話をふくらませて、いろんな英単語の語源や来歴や文化的背景やなんやかやを解説していて楽しい。

前巻はもう少し問題提起的というか、生物学を主とした科学一般書の翻訳者である著者が、様々な単語の訳について文芸的な面も加味しつつああでもないこうでもないと呻吟している感じがあったが、本書にそういう面は、ない。もう少しマニアックというか、単語の語源来歴にまつわるうんちくがこれでもかと語られる。これはこれで楽しく読んだが、個人的には前巻のようなツッコミ的な視点がちょっと薄れてしまったのは残念なように思った。

前巻にあったような、「恐竜」という訳語は実は間違いだということが最近わかった、という話だとか、それにまつわるdinosaurの訳語に関する変遷、みたいなキャッチーな話題もあまりなく、どちらかといえば地味。「とうもろこしはアメリカ原産だが、コロンブスのアメリカ到達以前はcornはどういう意味だったか、なぜそれがとうもろこしという意味に変化したか」みたいな「言われてみれば」的な話題が多い。

いや、繰り返すけどこれはこれで楽しい。けど、ちょっと読者を選ぶところはあるかも知れない。まずは前の方を読んでみて欲しい。そちらのうんちくが楽しめたなら、こっちも面白いはずだ。

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