かいじゅうたちのいるところ
なかなかいい映画でした。もとは絵本ですが、完全に大人向けのストーリーになっています。そのわりに寓意がわかりやすすぎるのはちょっとどうかと思ったんですが、まあ。
一方、映像はとてもいいですね。森の風景や砂丘といった風景もいいし、なによりかいじゅうたちがいい。着ぐるみなんですが、これが実に着ぐるみ感にあふれたちょっと可愛らしい質感で、とてもよかった。その割に体当たりすぎる演技なのも見どころで、砂丘では転がっていくわ、かいじゅう踊りでは島中を走りまわるわ、溝にはまるわで「中の人スゲーな」とつくづく思いました。いや、中の人などいません。
ところで映画を見終わった後に原作(未読)も読んでみましたけど、ぜんぜん違う話なんですね。物語の構成が全く違っていて、映画はかいじゅう踊りは物語のはじまりの合図ですが、絵本ではそこはクライマックスなんですよね。だから、上でわかりやすすぎると書いた寓意は映画オリジナル。
ところが、それぐらいはむしろ瑣末なもので、根本的に違うのは主人公、マックスの性格付けではないかと思います。絵本のマックスはしかめ面でやんちゃな男の子といった感じですが、映画のマックスは空想癖があって一人で遊ぶのが好きな、か弱い子になっています。この違いは重要で、かいじゅうたちの王様になる過程も、家に戻る理由も、かなりの部分が変化しています。しかし、何を考えてるかはよくわからない(というか曖昧なので読者に想像の余地を与える)絵本とちがって、空想にふけりがちで聞き分けのないマックスはこれはこれで感情移入しやすく、これは二時間の映画としては正しい選択ではないかと思いました。なにより演じているマックス・レコーズがよく、繊細そうなマックスを好演していたと思います。