コリイ・ドクトロウの Little Brother が翻訳される?

This entry was posted by on Sunday, 25 October, 2009

twitterでドクトロウ自身がつぶやいて曰く、Little Brotherは早川書房に売れたとのこと。これで17言語で出版される本になったと。

Little Brotherについての詳細についてはyomoyomoさんが書いているので細かいところは省くが、テロの恐怖から第二愛国法が制定され、人々の自由が奪われつつあるところに敢然と立ち向かう14歳の少年ハッカーの活動を描いたジュブナイル。ブルース・シュナイアーが解説を書いているのも特徴。とはいえ、自分自身の感想を読み返してみてもあまり褒めていない(笑)。正直に言ってそこまでの傑作だとは思わず、シュナイアーの一般啓蒙書(具体的には『セキュリティはなぜ破られたか』)への導入といった意味合いが強い気がする。個人的には、国家体制による抑圧ではなくてみんなが互いに自主的な監視・検閲するみたいな方向性をタイトルから想像していたので、そこがちょっと残念だと感じていた。ただ、合衆国憲法を引くところなど要所要所でぐっとくるパートがあって決して悪くはない。ジャンルとしてはジュブナイルということになるが、大人が読んでも楽しめる佳作だと思う。

ドクトロウは第1長編『マジック・キングダムで落ちぶれて』が早川から出ていたが、これがさっぱり売れなかったらしく、今後ドクトロウの小説が紹介されることはあまりないだろうなあと個人的には考えていた。アスキーなどから突然出る可能性もあるかとは思っていたが、早川からはもう無理かなと。なので早川が権利を買ったというのは嬉しい驚きでもあり、ただその一方で不安でもある。

『マジック・キングダムで落ちぶれて』は、基本的にはBoing Boingの著者であるところのあのドクトロウとの結びつきが弱くかった。つまり、そちらへあまり訴求しない売り方がされてきた。それで売れれば良かったんだけどそうでもなかった上に、「そっちのドクトロウ」に興味のある人たちには発見されづらかったというのが不幸だったのではないかと思っている。今回はテーマがまさにテーマだし、そういうことに興味を持っている人に届き、売れるべくして売れるといいなぁと本当に思います。そして願わくば俺の好きな方も出て欲しいなと。

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