ブリティッシュ・ゴッズ — 『お行儀の悪い神々』

This entry was posted by on Sunday, 26 April, 2009

お行儀の悪い神々

(承前)

で、マリー・フィリップスの『お行儀の悪い神々』てのが、まあ設定が同じなんですよね。なぜかロンドンに移住したオリュンポスの神々。すっかり力も衰えてて、ボロい家に細々と暮らしてる。アルテミスは犬の散歩のアルバイト、アフロディテはテレフォンセックス。アポロンはインチキ占い師。エロスは何故かキリスト教にかぶれている……という具合。で、そこに家政婦としてアリスという人間の女性が雇われることになるが……という筋立て。オリュンポスならギリシャの神なのでは、という気もしますが、まぁ『アメリカン・ゴッズ』だって出てくる神の大半はアメリカ原産じゃないわけですし。

ともあれ、設定は一緒でも、実はぜんぜん違う話。どっちかというと、わりと普通のイギリスのユーモア小説の流れを汲む小説だ。『お行儀の悪い神々』のオリュンポス神の状況は『アメリカン・ゴッズ』の神様たちの状況に近いんだけど、少なくとも「新しい神」との戦いといったシビアな世界はない。そもそもなんでこういう神様がいるのかもよくわからない。それに、出てくる神様たちは実に情けなくて、すっかり自分たちの力に振り回されてる。結果的に世界の危機が救われたりもするけれど、なんというか、結局この話は全部お前らが原因だろ! ってツッコミを入れたくなる。そういう話。

とにかく、始めから終わりまで非常に予定調和的で、一切読者の予想を裏切るようなところはないのだが、それでいて面白い。てか、そうであることが求められるタイプの話かもしれないですね。イギリスらしいユーモアと、神様たちの情けなさ、ちょっと哀感、といった要素が上手く出ている。

それはともかく知的でメガネっ娘なアテナがよいです。

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