川上亮『コミケ襲撃』
せっかく夏の期間中だということもあり、さらっと読んだ。
川上亮=秋口ぎぐるは『ラヴ☆アタック』や『ひと夏の経験値』など好きなところのある作家なんだけど、んーこれはちょっとイマイチかな。
知り合いに騙され借金を負い、追い詰められたしげる、レツゴー、ブンロク、浅野さんの4人は、同人誌即売会で儲けている大手サークルに強盗するという計画を立てる。上手く行きかけた矢先、最大手のサークルに向かったところ、なぜかそこは将軍様の某隣国が外貨獲得のために運営していたサークルで、諸処の偶然で襲撃は失敗。ところがごたごたの末に当のまんが家を誘拐してしまう。かくして公安警察と隣国のスパイに加え、そのまんが家をデビューさせようとしていたまんが編集者、主人公たちという4者がそれぞれの思惑で動きはじめるが……といったあらすじ。
基本的には、4人のうちブンロクというのがステレオタイプな空気の読めないデブオタという設定で、こいつが暴走して話がデタラメな方向にどんどん広がっていき、収拾がつかなくなっていくという話で、その話の転がしかたとかは悪くないと思うんだけど、なにかが足りないように思った。しげるのコンプレックスに溢れた視点がどうも作品のコミカルな雰囲気とマッチしてないような気もする。もっとも、作中にしげるがコミケ参加者を評するところは妙に印象に残ったりして悪くない。
ところでメインキャラ4人の名前が『ラヴ☆アタック』といっしょなのはなにゆえ?
それにしても、内容というか展開というか、ブンロクというキャラの造形やいじり方というか、いかにも映画っぽいよなーとか思って読み終えてから改めてオビを見直したらもともと映画企画コンテストの応募作品だったんですね。http://www.kadokawakikin.jp/announce06.htmlこれか。
>企画名:『東京即売会襲撃!!(仮題)』
>あらすじ:冴えない青年5人組は、知り合いに騙されて多額の借金を背負うことに。ヤクザから追われる毎日の中、同人誌即売会の会場の襲撃を計画。5人の小さな思い付きは、やがて国家を揺るがすほどの大事態を生むのだった……。美少女同人作家との出会い、うごめく国家の陰謀、謎の情報屋など、様々な人間の思惑が交差する、一日だけの青春群像アクション。
……5人?