思い出が目を覚ましてる 『海腹川背 SOUNDTRACK』
あるいは「少しずつ過ぎて行く季節がいつの間にかそう思い出重ねて」
ナントカいうゲームメーカも少なくともたったひとつだけ良いことをした。最近出たらしい buggy なバージョンにはさしたる興味はないが、サウンドトラックが出たのはあれのおかげだそうである。そんなわけでもうこの際、やってもいないバージョンのゲームをもとにメーカを貶すことはやめて、むしろ称えたい気分にさえなってくる。
『旬』のころがぼくは高校生で、はじめはせいぜい友達から借りてプレイするぐらいだったが、後に自分でも入手したし、ついでにスーパーファミコン版も中古で買ってプレイしてた。思えばあのころがゲーム機のゲームにいちばん夢中だったころだ。だから両方のバージョンのゲームに思い入れがあるし、どちらの音楽にも愛着がある。聴けば思い出す。ゲームのワンシーン。うまく行ったプレイ。みじめに失敗したこと。爽快な二段ロケットジャンプ。嫌らしい敵。ゲームオーバーの画面やエンディングの歌。そのほかもろもろ。玉露園のこんぶ茶とか(笑)。うーん、我ながらこのゲーム好きだったんだなぁ、とあらためて思う。思い知らされた。
ゲーム音楽の宿命として、音楽だけが自立して主張しすぎてもいけない。目的はあくまでもゲームに奉仕すること。でもそれも没個性であることは意味しない。この音楽たちは賑やかすぎず、しかしゲームの雰囲気を爽やかにする佳曲が揃っている。このシリーズはけっこうシビアな難易度の箇所があったり、どうしても超えられなくてコントローラを投げ出したくなったり、繰返し練習をして身につく技があったりする。そんなとき、聴き飽きないこの音楽は一服の清涼剤となっていた。音楽がもっと違っていたらあるいはメゲてしまった人も多かったのではないかとすら思う。まさしくベストマッチといってよかった。