アーサー・C・クラークについて

This entry was posted by on Wednesday, 19 March, 2008

亡くなったらしい。なんとなくあのままスリランカで妖怪のように生き延びていくイメージだったので驚いたが、しかし、死んだことそのものについてはそれほどのショックを感じない。

"Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic."

R.I.P.

 

クラークといえば、もちろん『2001年宇宙の旅』であり、『幼年期の終わり』であるわけだが、個人的なベストは『渇きの海』である。もっともSFマニアのあいだでは『渇きの海』や『楽園の泉』を推すのはよくあることで、それほど奇を衒っているわけではない。

クラークのSFは「工学的」な作品と、ややスピリチュアルに寄った作品とが残されている。有名な『2001年』や『幼年期』は後者の作品だが、前者はやはり面白いし、国内のいわゆるハードSF作家に強い影響を与えている。具体的には野尻抱介や林譲治がその代表格だろう(聞いたことがないが小川一水もそうなのだろうか)。『渇きの海』はその「工学系」SFの代表例であり、そのため日本のSFマニアのあいだではわりと評判が高い。

『渇きの海』の舞台は、すでに観光地と化した月だ。月面に、無数の細かい塵が降り積った海のような地帯があるという設定で、その「渇きの海」を渡る観光遊覧船が事故に遭う。というわけで、その船の救出作戦が描かれる。問題となるのは「渇きの海」の物理的特性で、無数の細かい塵はあるときには固体の、ある時には液体のような特性を示すため、容易には救出ができない……。こうした物理的な描像を、それを解決する策の描き方がクールである。今となっては古びている点も多くあるが、それでもなお素晴らしい。

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