Seven Levy “In the Plex”
In The Plex: How Google Thinks, Works, and Shapes Our Lives
『ハッカーズ』などで有名なスティーブン・レビーの書いた Google の本。ちゃんと発売日に買っていたのだけど、かなりのボリュームがあり、他の本に浮気したりしつつちびちびと読み進めたのもあってようやく読了した。
Google の本は世の中にゴマンとあるが、PR記事でもなく伝説的でもなく、取材を通して包括的に語った本は珍しい。スティーブン・レビーさすがという感じ。ついでに、著者本人がその場にいて聞いていたかのような妙に臨場感があり、面白げな話題にも事欠かない(個人的に印象に残るシーンは “Files are so 1990″ というシーンかな)。実際、TGIF や、search quality の launch meeting を見学したことがあるというレビーの語り口は、妙に自信にあふれている。真偽のほどについてはけっこう怪しい気もするが……。
欠点としては、この本は「Googleを形作った人たち」の列伝であり、したがって各論はあるものの全体を通す一本の線がないところかもしれない。個々のエピソードは面白いのだが、群盲象を撫でるの感はあり、副題にあるような How Google Shapes Our Lives のような大きなテーマをこの本で扱えているとは思えない。
だけど、ここまでいろんなテーマをカバーできたら充分だろう。 Google といえば Larry Page と Sergey Brin の会社、検索の会社、そういったイメージはいまだに強いが、例えば検索の話題一つをとっても、ページランクが出てきておしまいというわけではない。AltaVistaに売り込んでみた話、同時期に同じようにページランクに似たアイデアを抱いていた人たちのエピソード、Google創業までの話、検索品質の向上の話など多面的な話題が、Craig Silverstein、Urs Holzle、Jeff Dean、Amit Singhal、Udi Manberなど、そうそうたる顔ぶれと共に語られる。広告、クラウドコンピューティング、ChromeOS、Androidといった話題のそれぞれについても同じように、実に様々な人材を揃えながら多面的に語られている。
ところで、本の構成には若干疑問がある。検索や広告など技術的な話題にひと通り触れたあとで中国との関わりや政府との関係、訴訟などについて述べ、エピローグで Facebook や Bing が脅威になっているといったことを紹介する構成なので、読み終えた直後の読後感はあとの方の印象が強くなってしまう。まあ、そうは言ってもテクノロジーやイノベーションのパートを先に読みたいだろうから、難しいだろうけどねえ。
きっとそのうち訳されると思います。