映画『スーパー!』
妻に去られた冴えない男が、キリスト教ガチガチのチャンネルでやってたスーパーヒーローの番組を見ているうちに突然の啓示を受け、犯罪と戦うヒーロー、クリムゾンボルトを名乗って悪人(?)と戦いはじめる……というあらすじで、『キック・アス』などの素人ヒーローものの延長線上にある作品と言えるが、色んな意味で極まっていて、凄まじい。
極まっているうちの一つが暴力表現。暴力表現は過激で、遠慮会釈なく血が飛び、(クリムゾンボルトの主武器の)レンチで人間の頭をぶん殴れば頭蓋陥没するというところを描いている。クリムゾンボルトの頓珍漢な活躍シーンは基本は可笑しいのだけど、その過激な行動をきちんと過激に描いていて、なんともヤバそうげ。映画の列に横入りした人をレンチでぶん殴るシーンはドン引きすること必至。
途中で勝手に加わるエレン・ペイジ演じるサイドキックも奇矯な言動で不穏さに拍車をかける。これが極まっていきラストの展開と戦いにつながるという展開は、確かに見事というべきでしょう。
ただまあ、『キック・アス』などと比べると、笑いが少なく、他人にお勧めできる度はかなり下がっている作品であるのは確か。まあ、好きな人は見ればいいのでは、と思いました。あと、オープニングアニメーションはいいです。やっぱり内臓を飛び散らせたりしててその後の展開の不穏さを匂わせつつ、それでもまだポップな感じにまとまっている。
ところで、見ていて私が少し気になったのは、映画の中でのキリスト教(原理主義的な)の有りようの部分かも。主人公は敬虔な信者であり、ことあるごとに神に祈り、啓示を受けて(と信じて)ヒーローになる。エレン・ペイジに言い寄られても「結婚は神聖な誓いだ」として退ける。生真面目な堅物、というのを一歩推し進めてちょっとおかしいレベルの人、というのも描き方。映画はその価値観をよしとするわけではなく、一定の距離を置くが、最後にも主人公が自分の視点から啓示を再解釈するところなどもあり、強く否定をしているわけではない。こういう人もいるよね、という感じか。このへんが原理主義的な人のアメリカでの距離感なのだろうか? よくわからない。