ボクラノSFの長嶋有の解説
児童書などを刊行している福音館書店がボクラノSFと題したシリーズを開始したので買ってきた。ところで正式名称は「ボクラノSF」と「ボクラノエスエフ」のどっち?
担当者の人は昨年の京フェスにきて宣伝していたが、鬼頭莫宏のまんがのことは知らなかったらしい。ちなみに福音館書店といえば、たぶん有名なのは『ぐりとぐら』とか『おおきなかぶ』とか。ただ「ボクラノSF」はもうちょっと上の年齢層(中学生ぐらい)向きのジュブナイルSFということだそうだ。
で、買うときにぱらぱらとめくってみたのだが、筒井康隆『秒読み』で長嶋有が解説を書いており、こんなことを書いていたのに気づいた。
>読書は「豊かな心」なんか育てない。ただ「感じる」ためのものだ。ただ感じるために、文学があるのだ。
>僕たちはときどき、ジョギングや、腹筋や、腕立て伏せをする。「最近運動不足だな」「体がなまってきたな」とか「少し太ってきたな、ヤバいな」と感じたときに。(中略)
>心も、使わずにいると「なまる」。感じることが不足すると、ぶよぶよ太って鈍くなっていく。体と違って心はみえないから、みんな「ヤバいな」と思わない。みえないけど、でも絶対に心もなまるのだ。
このあと、「感じる」というのがどういうことか、というところから筒井に入っていくわけだがそれは各自読んでもらうとして、この導入は、まあ、よく言われるような事柄かもしれないとしてもうまいな、と思った。思ってその時はそのままレジに持っていって買った。
で、本屋から出て歩きながらふとこの文章と自分の中学時代を思い返した。そして疑問に思ったのだが中学生ぐらいのガキが「最近運動不足だな」と思ってジョギングなんかするんだろうか。まあ私は運動が嫌いだったのでそう感じるだけかもしれないが、運動するやつはするやつで「少し太ってきたな」などという動機でやったりはしないでしょう、この年頃は。
だから悪いということではないんだけど、子供の頃にこういう文章に出会っていたら自分ならどう感じたものかなあ。と、少し思ったことであった。