読書 | 宮部みゆき『ICO 霧の城』
>まあこれは、ファンノベルだからな。
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>宮部みゆきが ICO のファンで、だからこんな本の企画を通して、それなりの厚さのある小説を書き上げて、そういう行為に金を払ったのだと思えば、そういうものだった。
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>ICO というゲームのすばらしさは語られないことにあるのだと思う。それは優れたゲームが備えているべき性質だ。ゲームそれ自体では物語にはならない。そこにプレイヤーが介在し、プレイすることによってはじめて物語られるものでなれば、ゲームではない。
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>また、 ICO はなかでも語りの薄いゲームだ。少年イコと、少女ヨルダが霧の城を冒険する、という基本設定しかない。いきがかり上、物語のようなものが付随しているが、この設定の上にどういう物語を構築するか、というのはプレイヤーに任されているのだし、プレイヤーそれぞれで違うのだ。ついでに書けば、この小説は宮部みゆきの ICO という小説でしかない。宮部みゆきがゲームをプレイしている時に構築された物語でもなく、小説を書く上で意図的に取捨選択した結果だ。
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>宮部みゆきだから、それほどひどい出来ではないが、これが小説である以上、ゲームのファンを失望させることを免れることはできない。だからまぁ、これはファンノベルだからな、と思ってそれで済ますのが吉、だ。
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>おそらくゲームのファンが望んでいたのは、環境映像のように、美しい霧の城を、二人が淡々と乗り越えていく様だ。ダイナミックなキャラクターたちの躍動ではなく、スタティックな美しい光景だ。少なくとも僕はそうだった。で、宮部みゆきの作家の特性として、それは無理だった。そういうことだ。
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>それでも。それでも一言いわせてくれ。
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>この3章はいらんよなぁ。この人、ひょっとしてヨルダの方に感情移入してプレイしてたのかしらん、と疑念を抱くほどであることですよ。
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>あーでも、ゲームプレイしたくなってきた。その辺を刺激するというのは、客観的に見ると良いノベライズだったということなのかも。やろかな。3周目。
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